タカツテムの徒然雑記

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ポラリスは消えない(3) 感想

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本物ではないのに但馬ソラに成りきってポラリスとしてデビューしようとするミズウミ
ファン心理を超えたそれには歪さしか無い。でも真っ直ぐな想いに拠るものだから時には人を惹きつける事も有る。ミズウミが自身の在り方をどう捉えようと、その時点で一種の物語が成立している。なら芸能に魂を売った戸塚が目を付けない訳はなくて

戸塚の遣り方はミズウミを裏切るものだったけど、あの局面で話題性を持った状態でポラリスを復活させるには最良の方法であるのも確かなんだよね…
ただ、純粋なまでに橘ミズウミではなく但馬ソラを世に出そうとしていたミズウミとは相容れなかっただけで

結局、問題と成ってくるのは、但馬ソラは既に死んでいて舞台に立とうとしているのは橘ミズウミだというどうしようもない事実
ミズウミが自身を否定してソラを復活させようとしても、現実に復活できないならミズウミはミズウミとして世に出るしか無い


どうしようもない矛盾に出会った時、意味を持ってくるのはミズウミの過去か…
前々から疑問視されていたミズウミとソラの関係。過去に出会っていたのは予想内だったけど、昔のミズウミはソラっぽくてソラがミズウミっぽいのは完全に予想外

こうなってくると色々と認識は変わってくるね
ミズウミがソラのファンとして彼女を奉っていた。それが今に繋がっている
同様にソラもミズウミのファンとしてポラリスの活動に繋がっていった
二人の在り方はリンクしているから、ソラが語るアイドル像はミズウミも抱くもの

二人の道は不幸にも分かたれてしまったけど、ソラは変わらずにミズウミを意識してポラリスをしていたのようで
ミズウミがステージ上のアイドルを見上げていたように、ソラも観客席に居るアイドルを瞳に宿していたのか…

ソラがミズウミのアイドルで居られたように、ミズウミもソラのアイドルだった。ならミズウミはソラというアイドルにこだわらずとも誰かのアイドルに、生きる希望に成れるという事なのだろうね
破滅的な思想や言動で但馬ソラに成ろうと暴走していたミズウミが辿り着いた一つの終着点

ミズウミが焦がれていたポラリス再結成は短期間に終わり、本人は次のステージへ。物語が始まった頃には全く想像できなかった終わり方を迎えられた本作には拍手を送りたくなるね
勿論、終盤の展開にはもっと色々と描きたかったのだろうなと感じられるのだけど、それでも自身を否定していた橘ミズウミという少女がアイドルの偶像から抜け出して自分の道を手に出来た最終話は喜ばしいものだったのだと思うよ