剣の腕前により天下に名を知られると言えば誉と思えるけど、イサギの場合は斬首の腕前によって”斬聖”と知られているというのは何とも哀しい話。つまり知られるだけの首を斬ってきたという事だろうから
あまりに忌み事の匂いが濃すぎて人どころか竜すらも近寄らないイサギに唯一平然と接するタツナミという人物はそれこそ親父を想起させる人物に思えたのだろうな…
「きょうもやるぞ!!」と言われた瞬間のイサギの表情ったら普通の少年みたいだし
イサギにとって人と相容れない理由は首切りだけでなく、罪人の記憶が見えるという特殊な能力に拠る部分もあったのかな
彼にはそれだけ自分を否定する理由がある。だからこそ、それすらも平然と受け容れたタツナミを特別に思える。だからこそ、タツナミの首を斬らねばならぬ境遇も相手の平然とした顔も受け容れられない
ならば、何もかもを受け容れた上でイサギに「お前も使命を果たせ」と言い渡したタツナミの言葉はイサギの今後を決定づける言葉であり、それに則って首を斬れたイサギはタツナミの意志を継ぐ人間と言えるのだろうね
本作の加速度が上げるのはここでイサギが継いだのが意志だけでなく竜に関する記憶も含まれていた点か
本作の世界において崇高な存在である竜の死を導いた記憶はあまりに特別。それを目的にチエナミが近付いてくるのも、それを理由にイサギが島の外に出る事も在る種当然
ここでイサギの相方となるチエナミは逆にタツナミから継げなかった人間か。だから最初は継いだイサギに噛み付いたし、タツナミの竜殺しを引き継ごうとする
イサギが望んでタツナミを継いだ訳では無い点と比べると大違い。その為か、年齢的にも社会的にもイサギの先達者と言えるチエナミは島の外に出る彼の案内役となるね
けれど、その先達の構図が引っ繰り返ったのが人斬りのシーンか
チエナミの剣技や捌きは悪いわけじゃなく、むしろ剣客と評せるもの。ただ、イサギを前にすれば腕前の違いも心構えの違いも歴然。もはやイサギの斬り姿は美しいとまで言える
イサギを見てチエナミは己の未熟を悟るけど、一方で悟れるが為にイサギの未熟も見えるというのは面白い
イサギもチエナミも不足がある。そんなバディが竜殺しという難題にどう挑んでいくのだろうね