タカツテムの徒然雑記

主にアニメや漫画・ライトノベルの感想を投稿するブログとなっています。

おとなりに銀河(6) 感想

ああ、そうか…。棘による契約というファンタジー要素はありつつ普通に恋愛を重ねてきた一郎としおりの物語だから忘れそうになるけど、結婚するとか子を成すという段に至れば当然のようにファンタジーへと立ち返るのか
けど、その段を恋人パワー的なもので遣り過すのではなく、順序を踏まえてきちんと向かい合っていく本作はとても丁寧で優しさに満ちているね
そう感じられた最終巻だったよ


プロポーズを済ませた二人だから次に来るイベントは当然のように結婚式
…ここで何の問題もなく式本番を迎えるのではなく色々とドタバタあたふたした形で迎えてしまうのは何ともあの二人らしいね(笑)

あと、意外というか、そこがエピソードになるのかと驚かされたのが「五色」姓を変えるかどうかの点
しおりは全く悩まずに決めたけど、まちとふみおは逆に悩むのか

ふみおの「五色はどこいっちゃう?」という純粋さに満ちた質問はしおりに「五色しおり」として生きてきた人生を意識させるものに。島に禍根は有ってもそれで「五色しおり」まで無かった事にするのは間違っている
また、しおりが尊敬する惚幌先生の含蓄の多い話の影響もあったようで
最終的にペンネームの形で「五色」を残したのは良い判断


一郎とまち・ふみお、そしてそこにやって来たしおりが擬似親子っぽくてどうにも忘れがちだったんだけど、一郎達の母ってまだ存命だったんだっけ?全く話に絡んでこないから忘れていたよ
一郎は断られたから、まちは覚えているから。だから話題にされない母親

でもふみおは記憶が無いから抵抗感も少ない、興味を持つ
それはああいった家庭で子供がある程度の年齢になったら起こり得る課題なのだろうけど、主となるふみおが純粋な気持ちで会おうとしたからこそまちも断れない
でも、ここまで久我家に絡んでこなかったのはそれなりの背景があるわけで

足どころか気持ちまで止まりそうになったタイミングで迎えに来たのはしおりだったのは色々な意味で興味深い展開。…格好も興味深いものだったけど(笑)

今回は会えなかった母親。だからふみおは何も聞けなかった。けど、あの一件を通して一郎やまちが母をどう思っているかを少し知れたなら、それはふみおが自分自身は母をどう思っているかを知る最初のステップになったと言えるのだろうね


時間は流れて、まち・ふみおは成長して、ちひろはアパートから巣立って…。そして結婚した一郎としおりに訪れるのは新しい命なのだけど、この点こそ最終巻の肝となる部分だったね
自分は棘を持って生まれた来た。ならこの子は?
一人で考え始めたらドツボに嵌りそうな問題。ここで一郎を強く頼ろうとしおりが思えたのはこれまでの積み重ねによるものだよなぁ

二人で考えたから喜びも正しく感じられるしこれからどうすべきかも落ち着いて捉えられる。「一緒になろう」との一郎の台詞は良いなぁ…

兎も角、そうして二人で心構えが出来たから問題なく一花を産めたのだろうしすくすくと育ったのだろうね
そんなタイミングに訪れた一報には驚かされたな。確かに一郎としおりは契約のない愛という新しい道を開いたけど、その道を都と健が追う事になろうとは
しおりは心を決めているから何かを変えるつもりはない。でも無邪気な一花にまでその方針を押し付けたら、それこそしおりが嫌悪した島の在り方そのもので

島には戻らないけど、様子は見るという折衷案を受け容れられたのは良かったな
都と健が変わったようにしおりも頑なだった自分を変え始める何かを得た。そう思えたよ
それはそれとして、しおりの漫画を理解できないままに読み続けている都に笑ってしまったけども


全ての問題が解決されたかに思えた段で表に出てくるのはまさかの棘ですか。というより宇宙から飛来した流れ星か。
五色をずっと見守ってきたそれは今もしおりの中にあって、一花に継承されようとしている。流れ星にとってはそれが見守り共に在る遣り方。でも自由度が増した世代では不似合いなわけで

一郎が分けて欲しいと申し出たのは新たな見守り方を意識したものなのかも
流れ星に悪意が無いなら一緒に一花を育てて欲しい。それは同時に因習を止めるたった一つの遣り方にもなる
だから棘がもう問題になるなんて事はもうなくて。だから後に続くのは愛を育てていく物語

丁寧に丁寧に一つずつステップを踏まえていった一郎としおりだからこそ辿り着けた素敵な愛
その愛情と同じくらい素敵な物語だと迷いなく思える、そんな最終巻だったよ