タカツテムの徒然雑記

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『1917 命をかけた伝令』 感想

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前編ワンカットという売り文句から察せられるように脚本的な面白さとかカメラワーク的な技工よりも臨場感を重視した作品という印象を受けたかな
でも、それが伝令兵として戦場を駆け回るというストーリーと合致している為にワンカットという遣り方が良いシナジーを生んでいるように思えたよ

特にワンカットである為に生じる臨場感、つまりはまるで戦場にいるかのような感覚は凄まじいものが有ったかな。一瞬我に返ってどれだけ広い空間で撮影しているんだと感心しそうになる時だって有るんだけど、カットが途切れない為に少し歩けば死体に出会いふっと気を抜けば銃撃されるという「空間」の恐怖感が鑑賞者へ否応なしに響いてくるね
その意味では普通の映画というよりもアトラクションに近い印象も受ける。でもアトラクション的だからって極端な銃撃・爆撃シーンが続くわけではなく、多くのシーンを通して抑制的に戦場の様子が描かれているような気もする
それというのもスコフィールドが歩き走る場所が基本的には会敵の危険性が極端に高くない場所だからなのだろうけど。突破できない場所ではなく、かといって容易に到達できる場所でもない。その絶妙なバランスがスコフィールドの伝令劇を過剰なアトラクションとするのではなく、あくまでも戦争の一幕に落とし込んでいるね

でも、映画である以上クライマックスは存在するわけで。それが味方兵の突撃や砲撃を掻い潜り大佐の居所を目指したシーンだろうね。それまでがある程度抑制的だったからこそ、ワンカットで描かれる突破シーンの臨場感を凄まじく感じられる

一方でドラマ性について敢えて言及するとすれば人の死そのものが一つのドラマになっているのかな
スコフィールドが伝令を任された理由はドイツ軍の罠に拠って1600名の兵士を死なせないため。スコフィールドはブレイクと共に出発するのだけど、ブレイクはその途中で死んでしまう
その理由というのが敵兵を助けようとして、というものなのだから遣り切れない。戦時中なのだから本来はする必要なんて無いかもしれない。でも、何も考えず無我夢中でした救命行動がブレイクの命を失わせてしまった
それはどうするのが正しかったという点をあやふやにするもの

また、そもそもスコフィールドの行動にどこまで意味があるのかという点も本作は言及しているね。今回は伝令に拠って無意味な攻撃が回避された。でも大佐が言うように来週には別の命令が下って部隊は全滅しているかもしれない
その意味ではスコフィールドとブレイクによる決死の行動は何の意味もかもしれない

戦争も人の死も途切れること無く続く。それでもスコフィールドが一つの任務を終えて息を吐いたラストだけは一つの区切りとなったと言えるのだろうね