タカツテムの徒然雑記

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魔王都市: -血塗られた聖剣と致命の亡霊- (2) 感想

混沌を極める魔王都市での事件を通して相棒として信頼を深めたアルサリサとキード。続く2巻ではまた違った角度から二人の関係を描いているね


1巻では二人共に他人の協力をあまり得ない形で型破りな捜査をしていたし、勇者と魔王の後継者を目指しているなんて破天荒な目標が有るものだからついつい忘れていたけど、そもそもこの二人って組織に属する人間なんだっけ
キードは魔王都市に駐在する派出騎士で現場方の人間。いわば叩き上げ
アルサリサは不滅工房本部から派遣された人間。いわばエリート
だから相棒に見えても二人の立場は大きく違って、キードはアルサリサの命令に従う関係が本来。1巻では二人だけで脱法的な捜査をしていたから気づかなかったそれは不滅工房本部からアルサリサを監督する調整官がやって来て明確になってくる

二人は組織に属する人間としてルールに則った動きが求められる。法に基づいた正義にこだわるアルサリサには耐えられるそれは現場主義的なキードには受け容れられない
その状態で現場方の派出騎士が殺される事件が発生すれば尚の事

二人に生じる軋轢の象徴となる人物が本部からやってきたフォレークとなるわけだけど、この人物は中々の曲者だね
フォレークが意識しているのはとても政治的。真犯人を捕らえられるかという点よりも、犯人を捕らえる事は何を意味するかを考えている
だから実際の犯人であるかに関わらず政治的影響が少ないはぐれ魔族に罪を着せようとする

これは現場に居てはぐれ魔族を従えるギードには受け容れられない方針だね。だから調整官に従って仁義から外れるよりも嘘を吐いて仁義を通そうとする
でも、法や正義を意識するアルサリサは規則の中でフォレークに抗おうとするからギードと反目する。相棒として成り立つと思えた二人が道を違えるしか無くなるわけだ

1巻で二人は凸凹な相棒だと感じさせながらも、その凸凹さが場面場面で主従を入れ替えさせ事件の真相に至らせた
裏を返せばアルサリサとキードは一人だと凸か凹にしか成れない。反目したままでは事件の真相に至れないわけだ
二人が別々に行動している辺りの展開には目を覆いたくなるような拙さが有ったよ

それだけに混沌の中で再会して硬軟織り交ぜる形で互いの正義と仁義を通す形になってからの展開には爽快感を覚えてしまうね
二人はまだまだ未熟で魔王都市や不滅工房全体に名乗りを上げられる程の人物ではない。それでも己が掲げた正義や仁義に則って行動し助けを求める声に応えてみせた。それは少なからず無名から抜け出した瞬間のように思えたな

…と思えただけにラストの急展開には驚かされてしまったり
規則に従いつつも規則の反則的運用をしたアルサリサに罰が下されるかと思いきや、まさかキードが罰されるなんてね
フォレークにすればアルサリサよりも手を出しやすかった相手。でも、実態としては魔王の後継者に名乗りあげている人間でも有って
次巻はキードを中心に魔王都市がまたもや混沌に飲み込まれそうだ


そういや、『案内人』の正体が気になるけど一体どのような人物なんだろう
なんか発言の傾向がやたらとキードを思わせるものになってるんだけど、もしかして『棺桶通り』でキードと共に育った人間だったりするんだろうか?