タカツテムの徒然雑記

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青春ブタ野郎はゆめみる少女の夢を見ない 1 感想

原作6・7巻に相当し映画化もされた翔子のエピソードを翔子視点で描くという事になれば、俄然期待は沸いてしまう。それだけに前半は少し肩すかし感があったというのは否めなかったかも

原作6・7巻は翔子という人物をどのように描くかにより感動の度合いが変わってくるけど、そこに咲太や大きな翔子の覚悟も関わってくる
それだけに小さな翔子のみで描かれる視点というのはどこか歯抜けであるように感じられてしまう前半だった

だからこそ、中盤で手術が成功するシーンが描かれた事で本作がどのような物語なのかと突きつけられ衝撃を覚えてしまったよ…
本作はいわばエピソード0のようなものであり、翔子が二重の意味で咲太と出会う物語。原作6・7巻のコミカライズというよりシリーズ全体を裏側から描く作品となっていくのかもしれない

そのように考えると本作の前半部で行われる翔子と咲太の触れ合いも別の意味をもって見えてくるね
小さな翔子にとって咲太は憧れのお兄さん。彼女も居て自分を助けてくれて励ましの言葉もくれた。そういった憧れの存在に幼い慕情を抱くのは当然の話で
だからこそ翔子の心臓が咲太によって齎されたという衝撃が彼女を揺さぶる。移植による回復を咲太は喜んでくれるかもしれないが、その咲太は何処にもいない。それはどうしようもない喪失


大きくなった翔子が咲太に再会できたシーンというのは彼女にやり直しの機会を与えつつ、咲太への恩返しを行わせる機会となるね

それまで丁寧な物言いだった翔子の言動が咲太との会話シーンでは悪戯気味なお姉さんみたいな感じになるのは印象的
その変貌は今の自分より年下の咲太に対して、かつての自分が彼から受けたように導き励ます、そういった存在になろうとするものだと伝わってくる。だからこそ、やさぐれていた咲太に響く言葉が彼女から出てくる

というか、あそこまでやさぐれている咲太の姿は衝撃的だったな
本編においては思春期症候群に悩む少女達の隣に居てくれる頼りないけど頼りになる少年といった印象が強かった。心理的ダメージを受けるシーンがあっても基本的には飄々とした態度。そんな彼が完膚なきまでにやさぐれている
それくらいにこの時期の咲太は花楓の件でダメージを受けていたし、頼れる誰かが居なかったという話になる


本来なら有り得ない二人の邂逅は翔子と咲太に明るい兆しを齎す
でも、それが有り得ないならしっぺ返しが生じてしまうもので
本編では咲太の良きアドバイザーだった理央が行おうとする忠告が想像できるだけに、これからの翔子の選択が気になってしまうね……