タカツテムの徒然雑記

主にアニメや漫画・ライトノベルの感想を投稿するブログとなっています。

その着せ替え人形は恋をする(13) 感想

これまで制作してきた衣装の中で最も難易度が高いと思われるハニエルのコス、それは新菜に創り手としてのエゴを幾つも出させるものとなったのだけど、その感情を改めて海夢に伝える彼の姿には少し気迫を感じてしまったよ
衣装作りの多くは海夢を喜ばせる為だった、そこに自我を持ち込んだ彼が作り上げた衣装はそれこそ人外の領域に踏み込むようなものでしたよ……

というか、新菜が作り上げた次元の異なる衣装を着こなし雰囲気すら醸す海夢のオーラも凄かったと云うか
会場に着いた当初はいつもの雰囲気で、自分を撮りたいと言うカメコを前にしてもいつもの調子。むしろ沢山のカメラを前に少しビクついてる気配すら有った
なのに役に入り込んだ瞬間から海夢はハニエルに成った。その瞬間に覚えてしまった鳥肌はそう簡単には消えないものでしたよ……

そこから展開される事態はまさしく異常そのもの
これまで海夢がしてきたコスプレはあくまでもキャラクターや状況の再現という程度で、衣装に始まり表情や道具を駆使する事でコスプレとしてきた

でも、海夢がしているのは再現ではなく現出。存在しない筈のモノをこの世に降臨させる人間に許されない御業
だからか、彼女を囲む環は新人レイヤーのそれではなく、何も名乗らない彼女への呼び名も自らと異なる身分の者を呼ぶ尊称となる
それは魅了された者を飲み込む異界だね。海夢が『天命』の登場人物ハニエルに成るだけでなく、集う人々すら『天命』の登場人物になってしまう
これはもうコスプレという次元を超えている

このような事態が作者にすら届くのは納得の展開
溝上や司波の感想が囲みに集った者達と異なるのは彼らが制作者だからだろうか
「刻央でもこれは描けねぇわ」「見事だ」は最大限の賛辞。ただ、それが海夢や新菜に届いた様子が無いのは気にかかる……


今回の行事は新菜と海夢にとって悪い意味で思ってもない事態になってしまったような…
海夢は大勢に撮って貰ってプロの誘いも受けた。でも肝心の新菜には撮影して貰えなかった
新菜は自分が作った衣装を大勢に認めて貰った形だが、直接にその声は届かず囲いの外に居ただけ
また、新菜は異界を作り出した海夢を見て何か思う処があったようで。それは創り手としてのエゴに関わるものか、それとも自分と海夢の関係に関するものか

あくまでも趣味の領域でしか無かった二人のコスプレ衣装製作が二人だけの話でなくなるような、どこか寒気を覚えずに居られない巻でしたよ…