第十二話夢路より
終わりは賑やかさより叙情的な風景を優先した趣深い回となったね
前回のレイコが素晴らしい景色を大切な人と共有したかったという話と繋がるかのような要素が見られたね
自分の見た美しい風景を誰かと共有したい見せてやりたい、そう思うのはその風景が不変でないと知っているから。でも変わるからこそ、幾つもの美しい風景に出会えるのかもしれない
夏目はあの街で様々な繋がりと巡り合った。けれど妖とは少し関わってそれっきりというパターンが多い。それはまるであの街にいながら一期一会の旅をしているみたい
また、普通は自分が見た風景を誰かと共有するには一緒に見る以外に無いけれど、遠くへ行けない者に対して夢を通して自分が味わった風景を見せるとは相手を遠い旅先へと連れて行ってくれたかのよう
オリガミが見せてくれたのは容易く出会えないからこそ誰かに教えたくなる素晴らしい夢景色、誰かと共有したいけれど、簡単には共有出来ないから余計に美しくなる
すぐに共有できない光景を想像させるのは何も妖だけの特権ではないね
恋の歌を見て詠み人が過ごした光景を想像する。庭に芽吹いた蕾を見て咲く季節を想像する。また、夏目も何気ない風景に興味を示すオリガミを通して景色の見え方、想像の仕方が変わってくるね
そうした点を踏まえてか、この最終回はこれまで夏目が過ごした日常を当たり前のものと描きつつ、最終回である為か風景の尊さを再認識できた為か、いつもと少し違って見えたのは面白い
オリガミは夏目やニャンコ先生に多くの景色を見せてくれたけど、夏目もオリガミに沢山の景色を見せてやれた。それは互いにお礼を贈り合っているかのよう
夏目が過ごした新たな一期一会。もう一度は出会えないかもしれないからこそ美しく感じられるその出会い、オリガミが残してくれた綺麗な花
私達が『夏目友人帳』という作品を通して味わう多幸感を改めて描いてくれたかのように感じられるとても良いエピソードでしたよ