タカツテムの徒然雑記

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謎のクィン氏 感想

クリスティ作品の中でも異質さが群を抜いているハーリ・クィンを主題に据えた短編集
この短編集の魅力は本来なら探偵役となるハーリ・クィンが推理もしなければ捜査もしない点。それどころか事件への関わりだって少ない
なら、誰が推理を行うかと言えば人間観察が趣味のサタースウェイトとなるわけだ。ハーリ・クィンによって与えられた天啓を元に想像の輪を広げ事件の真相に気付く
本作は一般的なミステリと大きく異なる構図を持っているからこそ、面白さも際立ってくるね

そもそもからして、ミステリの短編集なんて或る一つのポイントに気付ければ真相も容易に気付ける構図となっている事が多い。その意味ではミステリの短編では必ずしも探偵が必要と言いきれないのかもしれない。素人探偵が活躍できる余地が生まれる
だからってハーリ・クィンに導かれたサタースウェイトの振る舞いは特異としか言い様がないのだけど

サタースウェイトは人間観察が趣味というだけ有って、気付くべきポイントにはおおよそ気付いている。でも探偵ならではの捜査・推理方法を持っているわけではないから事件に出会っても動き方を知らない
そこでハーリ・クィンが示す天啓が役立つわけだ。探偵でもないサタースウェイトはハーリ・クィンの存在に拠って自分に何かしらの役割があると確信する。それによって事件との向き合い方を見定められる
2人は相棒というわけでもないのに、まるでタッグを組んでいるかのように最良のパートナーとなっていくね


収録されている短編の中では『死んだ道化役者』が一番好印象を受けたかな

10年以上前に終わった話だった拳銃自殺。それが現場をモチーフとした絵画をきっかけとして過去への追憶が始まり、役者が揃い、そして真相へ到る。その上で恋の端緒も見え隠れする
本短編集の魅力が詰まった話であるように思えましたよ