タカツテムの徒然雑記

主にアニメや漫画・ライトノベルの感想を投稿するブログとなっています。

男子禁制ゲーム世界で俺がやるべき唯一のこと4 百合の間に挟まる男として転生してしまいました 感想

本作は百合ゲーの世界を舞台にしていたり、燈色も百合を信奉する者として恋愛に積極的ではなかったりするけれど、燈色の周囲は普通に異性愛ハーレム状態でフラグが立っている娘もかなり多い
その意味ではラブコメ作品と言えるのだけど、何分に燈色自身にヒロインと進展したい等の欲求が希薄なせいで、一対一の状態で特定のヒロインと絆を育む描写は多くなかった。それだけにこの巻で行われたクリスとの逢瀬はかなり意外だったかも
フェアレディが作り出した幻想の精神世界から抜け出す為には燈色とクリスは協力しなければならない。それが二人を大きく変えるものとなったね

というか、ハーレムものだからこそ他のヒロインがあまり絡まない形でクリスとの仲が進展する描写が集中的に描かれるなんて予想外だったよ
そもそも前巻の時点では敵対し命を削るような戦いを演じた間柄。最終的にクリスの心変わりはさせられたものの、燈色への印象が良くなったわけでは決してない
また、クリス自身もミュールへの印象が変わったと言っても、これを期に積極的に接し方を変えられる程ではなかった。あの教会に助けに来たシーンだって前の彼女からは想像できない言葉を発しているとはいえ、全ての過去を無かった事にできる程の変化を手にしたわけじゃない。どうしたって妹に辛く当たった時間を経たクリスという人間性から逃げられない

それ故にフェアレディが作り出した外界と隔絶された空間はクリスに大きな影響を与えたようで
本来ならば、あの精神世界に囚われた段階で燈色やクリスを心配する他の人物達の動向が描かれたっておかしくない。けれど他の人物が描かれるとは裏を返せば燈色とクリスだけの空間が中断される意味にも繋がって
だからこそ、他ヒロイン達の様子は書き下ろし短編までお預けされるわけだ。あの場には燈色とクリスしかいない。2人だけの想いの醸成がフェアレディ打倒の鍵となるわけだ

それにしても燈色はフェアレディを倒す為とはいえ、よくもまあクリスと恋仲になろうと思えたものだね
百合が大好きで百合の可能性がある娘に手を出すなんてまるっきり考えられないタイプ。なのにクリスには手を出した。それは回り回ってはクリスとミュール、アステミルとラピスの仲を守る為なんだろうけど
でも、容易に崩せない程のフラグを立てている時点で彼の望みは果たせない気しかしないなぁ(笑)


クリスも燈色もフェアレディを倒す為だけの協定と割り切っていた筈。だというのに1カ月程度の時間が毒牙のようにクリスを蝕んでいたというのは何とも言えない話
前巻で敵対していた時や今回の序盤におけるクリスの態度からして、氷の如く誰にも心の温かみを見せる事の無い人物に見えていた。だからこそ燈色もクリスに対して期間限定の精神世界から逃げられれば終わる恋人関係を提案できた

だというのに1ヵ月経ってクリスに起こったのは愛に縋る少女への変化。愛は彼女を強くするのではなく弱くしてしまった。
孤独に生きてきた彼女がようやく手にした不変の世界での恋人。それはミュールとの仲を辛うじての形でしか修復できなかったからこそ陥ってしまった心の罠

ああまで弱ってしまったクリスを見れば燈色とて揺らいでしまうと思いきや、ここで己を「百合を護る者」として定義し続け精神を喰われなかったのは流石。いや、ちょっとは手を出したっぽいからこっちもこっちで辛うじてという感じなんだろうけど

それでも燈色がクリスに対し信じ続けたのは彼女のヒーロー性か。というよりもミュールが信じたクリスという姉の姿か
クリスにもかつて妹から信じられていた記憶が有る。それを燈色によって刺激されたなら心が弱ってしまった状態だろうと戦場に立てる。燈色の隣に並び立てる

ラスト、彼女にとって幸福な世界が壊れると、幸福な記憶が消えてしまうと判っていても世界の崩壊を望んだ彼女の美しさには尊さを感じてしまったよ……


と、ここで燈色には拒否感の強い経験が消えるなら彼にとってめでたしめでたしとなる筈だけど、精神世界からの脱出にあのアルスハリヤが関わっている時点で嫌な(もしくは愉快な)予感しかしないなぁ(笑)