タカツテムの徒然雑記

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スクール=パラベラム (2) 感想

詠美ちゃん、前巻ラストで思わせ振りに顔見せした際は京四郎の平穏を完全無欠にぶち壊す巨悪に思えたけど、普通に良い人だこの人……!
約束は律儀に守るし、生徒達の安全だけでなく感情面も慮っている。裏取引は行いつつもそれが敗れた時に恨み節に走ったりもしない
こんな人に迷惑掛けるとか京四郎の方が悪人じゃん……


さておき、今回のメインとなるのは風香だね
第1巻登場時はふわふわした言動からその本性が掴み辛かった少女。1巻時点の情報で自分なりに彼女について解釈したつもりだったけど、この巻を読んでその思い違いを痛感させられたよ
この2巻はこちらの先入観をぶん殴ってくるかのような話だったね

コスフェスという学生の実力を試す場でありながら裏で進められていたのは政治的な取引。梶野等は何も知らされず用意されたシナリオだけを見て、その範疇でしか動く事を許されない人間
対して、京四郎や風香等の特別な能力を持つ人間は別枠。利用価値が有る彼らはシナリオで用意された役割が有りその通りに動く事を期待される。ただし、特別な人間だけにシナリオを壊す可能性を秘めている

京四郎は主人公としてその内面を詳らかにしてくれている。だから彼が詠美の策略に憤ってそのシナリオに叛逆の意思を示すのは納得できる
けれど、詠美を前にした風香は内面を容易に理解させてくれない。その上で詠美のシナリオも京四郎の配慮もぶち破る
それは彼女が持つ特異性が為せる業であるように思えてしまう。言葉少なな彼女は誰にも思い通りに動かすなど不可能な人間に見える

でも、そういった認識こそが間違いだと判ってくるのが後々の展開だね
謎の傭兵として学園に紛れ込んだ京四郎と誰より抜きん出た容姿を示す風香。二人の関係は京四郎がナイトとしてお姫様の風香を守る、それが当然の構図に見える
その関係を当たり前のものと思い込みすぎて風香は何も出来ない何も判らないとまで思い始めていたのが京四郎と言えるのかな

そもそも本作って舞台そのものが特別なものだから、そこで他者より秀でた存在になるのは当たり前な状態になってしまっている。でも、問題なのが学園内でも才能の優劣が有るという点
京四郎の周囲には紗衣や白上や雪代みたいなのが居て、特別な筈だったのにそこに届かない梶野が劣っているみたいに映ってしまう。そして紗衣達は梶野の心情を理解してやれないし、梶野も紗衣達を理解出来ない
その環境で誰よりも特別な風格を持つ風香はそれこそ誰であっても理解できない孤高の存在に思えてしまっていた

でも、それは理解できないと理解したのではなく、理解を放棄しただけかも知れず
無理解の波に耐えられず漏れた彼女の心情は京四郎だけでなく読者の思い込みを殴ってくるものとなったね
特別だからオーラが有るから。それは風香を一見した際の重要な部分かもしれないが、それで彼女の全てが判るわけではなく
あのシーンで風香が語った事に何も特別なんて含まれていなかったね。とても当たり前でどこにでも居る少女として当たり前の事を語っていた
そこで京四郎が示した反省は確かに風香を失望させたものかも知れないけど、同時に同じ世界の住人であると踏み込んでくれた京四郎に思う処はかなり有ったんじゃないかな

その後に行われたコスフェスでの風香の大暴れには目を見張るものがあったね
その意味では彼女は特別になったのかも知れない。でも、彼女が自分の意志でその特異性を思う存分に使ったなら、それは特別だったというより実力を示したと表現した方が正しい
こういう人間だろうと思い込んで見ていた頃も彼女はとんでもない人間と認識していたけど、実力を発揮して別の意味でとんでもないと思えたよ


陰謀も騒乱も有るけれど、賑やかな学園風景。だというのに、次巻では大変な事態になるようで。というより完結してしまうんだ…