タカツテムの徒然雑記

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乙女ゲー世界はモブに厳しい世界です 12 感想

この巻はリオンにとって最も試練多き内容となったね…

普段はのらりくらりと面倒事を回避しつつ、いざ荒事になれば圧倒的戦力で敵を叩き潰す
ローランドの無茶振り以外はおおよそ好き勝手にやってきたリオン。けれど今巻にてリオンの前に立ち塞がるのはエリカの寿命問題にルクシオンより強い敵

現実逃避するように学園祭を楽しもうとしても、その最中にもエリカは体調を崩す
おまけにリオンにとって友人のような立ち位置になったフィンとも離間
状況がリオンの都合を無視して蠢くなんて毎度の事では有るけれど、今回はリオンですら手に負えない状況なのだからどうしようもない

ここでリオンが素直に地球からの脱出を決意していたらある程度の被害は出てもリオンが守りたい者達は守れるスムーズな道へ進めたはず
でも、ここで無謀な道を選んでしまうのが彼なんだねぇ…

判断を翻した直接の決定打はドロテアの妊娠。けど、ドロテアの親族の多さも関係している筈。リオン自身にも守りたい人はいるし、その守りたい人にも更に守りたい人がいる
これはリオンがこの救いようがない異世界で築き上げた人間関係を見事に示したものだね。リオンはいつの間にか多くの人と繋がりを持つようになって、いつの間にか自分だけが良ければそれで良いという人間ではなくなってしまっていた
だから現状において最も困難な道を選ばざるを得なかった


リオンがもう少し弱い人間であれば人に頼る事も考えたのだろうけど、なまじ圧倒的な力を持つが故に人には頼れない
それが明確に現れてしまったのがアンジェリカ達に突きつけた婚約破棄か……
リオンにとって彼女らは最も守りたい相手。でも頼る相手ではないから突き放す
その一方で妹であるマリエは突き放せず、むしろ彼女の存在で更に追い詰められていくなんて様々な意味で理不尽過ぎる……

その理不尽さはリオンだけが抱えるものではないという点が後半の展開を形作っていくのは素晴らしい展開
リオンがこれまでに為してきた諸々の影響を受けた者達は数多い。その代表がアンジェリカ達でありユリウス達であり
孤独に戦おうとするリオンの目を覚まそうと動き始める彼女らの行動は本作にしては珍しい代物。何故なら局面が大きく動く時は何時だってリオンが中心に居たから

その中で最も驚きの活躍をしてみせたのがユリウス達か。五馬鹿とリオンから下に見られていた彼らはそもそも物語序盤でリオンに大負けしてその後もお荷物的なポジションだった
そのユリウス達がリオンに決闘を挑み引き分けに持ち込んでみせた。それは彼らの価値を何よりも証明するものであり、同時にユリウス達にとってリオンはもはや憎むべき相手ではなく友人なのだとも証明している
それはリオンの独り善がりを間違いだと示す何よりの証だったよ…


ユリウス達がリオンと直接対決する裏で舞台の下地を整えるアンジェリカだけど、リオンをとんでもない立場に就けようとしているね!
いや、まあ帝国との全面戦争を行うなら最大戦力のリオンをその立場にした方が良いのだけど、それにしたってとんでもない展開だ…
おまけにリオンにはその事実を直接には伝えていないのだから人が悪い…。まあ、伝えられていたらそれはそれでリオンは新たな心労を持つだろうからあの状況では伝えない方が良いのだろうけど

兎にも角にも舞台はリオンを中心として整った。遂に本作も終盤に近づいているのかな?


そういや、この巻ではリオンを助けたい、頼られたいと思う者達の行動が目立つ巻だったけど、ユリウス達に匹敵するくらい意外な行動に出たのはルクシオンだろうか

普段はリオンと憎まれ口を叩きあって悪友のような関係性を築いていたルクシオン。ただの人工知能に過ぎないはずなのに妙に人間臭いタイプのルクシオンがリオンを守るために命令違反ギリギリの行動に何度も出ていたし、リオンを追い詰めるマリエに嫌悪を向けもした
その正体はラストに明かされるのだけど、この人工知能らしからぬ変化は人類が追い詰められつつ有る状況に何を齎すのだろう?