タカツテムの徒然雑記

主にアニメや漫画・ライトノベルの感想を投稿するブログとなっています。

乙女ゲー世界はモブに厳しい世界です 13 感想

遂に始まる最終決戦を前に、リオンがあの地位に就いた事で王国が一つに纏まる展開は熱い。おまけに敵対していた時期も有ったフォンオースやアルゼルも協力するなんてね
最終決戦に相応しい舞台。けれど、成否の殆どがリオンの双肩にかかっているとしたら彼の無茶を止められる者なんて誰も居なくて

そこで前巻から人間臭さを増したルクシオンだけが必死にリオンの無茶に反発するのは趣き深い光景
初期の頃のルクシオンなんて本当に人工知能を持った機械でしか無くて、相棒感も薄かった。けれど、幾つもの冒険の中でリオンと憎まれ口を叩きつつ幾つもの死線を共に越えて
そんな2人にはいつの間にか不思議な絆が生まれていたね。作者が後書きで述べていたけど、オリヴィア達はヒロインとしてリオンの傍に居るけれど、ルクシオンだけは唯一の相棒としてリオンの傍に居た
だからルクシオンだけはリオンの捨て鉢な振る舞いに最後まで抵抗して

ここでリオンの側も前巻にて婚約者達にしたような突き放す態度を取らない点にルクシオンを特別視しているのだと見えてくる
勿論、ルクシオンとオリヴィア達とでは関係性が異なる。リオンはルクシオンの力を借りて戦って来たのだから、ルクシオンがいないと彼は何も出来ない。その意味ではオリヴィア達のように突き放す事は不可能と言える。でも、突き放せないからと言って、「お前には最後まで付き合ってもらうぞ」なんてリオンが言える相手は他に居ないと考えれば、やはりリオンにとってルクシオンは特別なのだと判る
だから、危険な強化薬の投与も任せていると言えるのかも知れないしね


リオンとルクシオンだけでなく、今巻は他の面々も命を削るような激闘を繰り広げているね
中でも5馬鹿というかユリウス達の健闘は目を見張るものがあったよ

初登場時は鬱陶しいやられ役で、共和国編の辺りから鬱陶しい馬鹿になって、遂に前巻にて熱い魂を持つ親友となった
だからってリオンと共に戦える程になるとは思わなかったけども。おまけにリオンを信じて先に進ませるなんて彼ら以外との間柄だったら成立しないような振る舞いまで見せるのだから初期の頃とは大違い。
ユリウス達はきっと誰よりもリオンの強さを信じている。そしてリオンの側もユリウス達のしつこさを理解している。そうした関係がアルカディア突入という大仕事を共にする仲間へと昇格させたのだろうね
本作にて最も成長したのはもしかしたらユリウス達だったのかもしれない

と、戦闘中はあれだけ見せ場が有って格好良さすら感じたのに、最終的にギャグ時空的な方法で助かる彼らって何なんだろう……(笑)

マリエに関しても認識を改めたくなるような振る舞いが目立ったな
最初の頃は自分だけが良ければそれで良いと言わんばかりにユリウス達を騙しオリヴィアを追い落とした。そのツケが後にマリエを大いに苦しめはしたけれど、基本的には芯の強さが彼女の魅力となっていた
けれど、前巻にてマリエの真実を知ってもユリウス達が自分を受け容れてくれて、更には自分の愚かさが兄を追い詰めていると知って
そうしてマリエは真の覚醒を迎えたね
聖女として戦場に立ち、逃げるべき場面でも逃げなかった。きっとその行動はマリエで無ければ出来ないもの。こういった行動はリオン譲りに思えるね


ただ、やはり最も言及したくなるのはオリヴィア達3人の婚約者か
アンジェリカもオリヴィアもノエルも今回の戦闘では王国軍を支える程の働きを見せた。それは他の人員では為し得ないもの

でも、彼女らの役割はリオンを前にした時にこそ最大限に発揮されて
これまでリオンがひた隠しにしてきた転生者の真実を知ってもリオンへの愛は変わらなかった。捻くれて現世へ戻ろうとしないリオンを前に彼の心情を代弁してみせた
それ程までの愛情を向けられればリオンは改めて自分があの世界に必要とされる人間だと察する事は出来るわけで

そうした前提が有ったからこそ、その後に出会う死者達の見送りも本気の反発が出来ない部分が有ったのかも知れない
ゲームの登場人物だとか酷い態度を取ったとか、そうした振る舞いが有ってもアンジェリカ達はリオンが大切であり生き返るべきだとの想いを変えなかった
それと同じようにルクシオンはリオンを生かしたいと考えているし、リオンによって死を迎えた者達もリオンは生きるべきだと語る
それ程までの感情を向けられればリオンに抵抗できる余地はないね。というか、あれだけ追い詰められないと本音を語れないリオンって本当に捻くれてるなぁと改めて感じてしまったが


現世に戻ったリオンを迎えたのは重すぎる地位だね
転生した頃は貧乏男爵家の次男坊だったのが今となっては国を背負う王様。一飛びにそうなったのではなく、一つずつ昇進してこの地位に就いたのだから凄い話
でも、リオンは背負うものが有ってこそ輝く人間のように思えるし、これはこれで逆に良いのかもね
まあ、それにしてもあの乙女ゲームが6作目まで存在するとか流石に無茶苦茶が過ぎるというかどこまでもあの世界はリオンに厳しすぎるとおもってしまうが(笑)


乙女ゲームを舞台にしながら骨太な冒険ファンタジーやロボットバトルを展開してみせた本作には驚かされつつも笑ってしまう場面が幾度も有った。そうした楽しみを提供してくれた本作が終わってしまう事は寂しくも有るが、終わりまで読めた点はとても満たされたものを感じてしまうね
本当に良い作品だったよ