タカツテムの徒然雑記

主にアニメや漫画・ライトノベルの感想を投稿するブログとなっています。

あした、裸足でこい。3 感想

季節は文化祭、参加者として模擬店を巡るだけでも楽しいのに天文同好会が対立しながら運営する形になるとは意外な展開
六曜にとっても、二斗にとっても大きなターニングポイントとなる文化祭・碧天祭は二人と繋がりの深い巡や五十嵐を参画させ、更に大勢の人を巻き込むイベントとなったね


この巻でメインヒーローとなったのは間違いなく六曜だったね
第1巻で気の良い先輩として同好会に加わり、その後も奇妙な組み合わせの同好会に違和感なく溶け込んでくれた。彼が同好会に齎した恩恵は計り知れない
その彼が自分の夢の為に碧天祭を成功させたいという。巡や五十嵐がそれに協力するのは納得できる展開
でも、それは二斗と対立するという意味でも有って…

これまで幾つかのアプローチで二斗の失踪回避を狙ってきた巡だけど、その意味で言えば碧天祭で彼女の敵となる事はむしろ失踪する可能性を高める事になるかもしれない
それでも六曜の側に立ったのはいわばバランスを取る為とも言えるのかな

二斗は凄まじい才能を持っていて、巡の助けによって困難を打ち破った場面が無いわけじゃないけど、少なくとも音楽面では巡が関わらなくても大きな成果を残せている
言ってしまえば巡が居なくても二斗は成功する可能性が高く、逆に二斗の前に居れば他の者は倒れる可能性がある。それが示唆されたのが前巻における五十嵐であり今巻における六曜となるわけだ

ただ、そこにはどうしようもない盲点があって…
二斗の前に居れば不幸になるかもしれない。その法則が巡に適用されない訳がないと気付ければ二斗が何を懸念していたかなんてそりゃ判りそうなものだったんだよね…
あの発言は巡の行動全てを否定しかねないもの
二斗の彼氏という立場だったのに彼女の失踪理由を知らぬままに高校を過ごしてしまった。その過去を変えたくてやり直しをしているのに、そもそも二斗の近くにいる事が彼女の失踪に繋がったのかもしれない
このどうしようもない矛盾と無力感はこれまで壁を打ち破ってきた巡を追い詰めるものだね


別尺度から追い詰められていたのが六曜と言えるのかな
彼は小学生時代の成功体験と自分は諦めないのだという全能感によって突き進んできた。凡人でも天才の二斗に勝てると示さなければならなかった
確かにその点で彼は巡と違って出来る側の人間と言えるのだろうけど限度がある。二斗は真っ当な努力で倒せる存在ではない
でも努力は裏切らないという体験と明確な目標設定が逆に彼を縛り付けていたのかもしれない

巡と六曜は全く異なる人間。それでも行き止まったタイミングと相手は全く同じ
だから互いを理解するなんて出来なくても、壁を打ち破る遣り方に共通項を見つけられる

六曜が自身と巡の判り合えない違いを理解して、それによって努力で届かない領域が有ると認めるシーンはじんわりと響くものが有ったなぁ
巡はやり直しによって高校生活を以前と大きく異なるものに変えつつ有る。それでも坂本巡という人間の根幹は変わらない
同様に、未来にてくたびれた青年となってしまった六曜だって、高校時代と印象が変わってしまったとしても六曜春樹である事実は変わらない
それは自分の周囲を不幸にしてしまうと嘆く二斗への強力な反論となれる。二斗が居たって居なくたって、人としての違いが有るならば、努力では届かない人間性があるならば。二斗に関係なく自分の人生を続けていく事は充分に可能

六曜と巡が判り合えないと判り合えた点は二人だけでなく、二斗すらも目を覚まさせるものになったね
碧天祭で相手に勝つ為に本気になる。言葉にするだけなら簡単でも実現に繋げるのは難しいそれを全力でやっている。だから有志ステージはかつて無い盛り上がりを見せるし、二斗も対抗する為に驚きの変身を見せるわけだ


碧天祭での衝突を経て定まった巡の目指すべき方向性。彼がやり直しの中で掴まなければならない「幸福」は果てしなく難しいものであるように思えるけれど、それでも目指すべきものすら見当たらなかった時と比べれば雲泥の差
巡は二斗に失踪を辞めさせるだけの材料をどこまで提示出来るのかな?

そういや、過去の時間軸だとまだ中学生である為に巡との関わりが薄かった真琴だけど、まさかの事情打ち明けにより関わりが生まれたね
過去の自分に黒歴史を突きつけてでも巡との関わりを作った真琴。その心境がどうにも気になるけど、それが明かされる時は果たして二人の関係はどうなっているのだろうね?