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元より興味はあったのだけど、艦これコラボに拠ってより興味を惹かれた作品
第二次大戦中のイタリア潜水艦について描かれた映画なんて初めて鑑賞する自分にとっては様々な興奮を呼び起こしてくれる作品と成ったかな
作品序盤の流れについては少し苦手意識を感じてしまったのは事実。まるで詩を詠んでいるかのような長台詞やまるで多人数の手記を結び合わせたかのような展開は少々とっつきにくいと感じてしまった
けれど、隊員達が思い思いに歌う様子が描かれたり狭い潜水艦の中で時には衝突したり時には遊びに興じたりといったシーンは戦争ものならではの描写と感じられたからこそ悪い映画とも思えなかった
評価が上がり始めるのはやはり機雷除去のシーンからか
誰かがやらねばならぬが、船外に出た者は確実に命を落とす。そこで勇ましく名乗りを上げたヴィンチェンツォの姿には感銘を受けてしまった…。十字架か何かを仲間に預けた様子には彼の感情が最大限に詰まっていたのに、その後は自分の誇りに懸けて機雷を取り除くのだという気概が感じられる圧巻のシーン
だからこそ、もう救われない彼が美しい海へと消えていくシーンには何とも言えないものを感じてしまった……
そして本作のメインテーマ部が始まるのがベルギー船籍の商船を攻撃するシーンから
相手が砲撃してこちらが砲撃し返して。隙とか関係なしにいつ命が奪われてもおかしくない海上の戦場。自分の命を懸けたなら相手が沈むまでを見届けたい。それは戦時中なのだから当然の感情かも知れない
その点が難しい扱いと成ってくるのが生存者の取り扱い。最前まで敵として命を奪い合った相手。情を見せようにも潜水艦は狭いし、何かをされたら堪ったものじゃない
非常用品を渡しただけでも充分な情だったと思える状況。だからこそ、サルヴァトーレが再び戻る判断をしてヴォーゲル達を牽引すると決めただけでも驚かされたし、彼らのボートが沈んだ際に潜水艦に収容したのは更に驚かされた
ここで序盤の長台詞や演説のシーンが活きたと感じられたよ
あれらのシーンに拠ってサルヴァトーレは人を納得させる言葉を使える人間であると示されている。彼の演説力が示されていたからこそ、ベルギー人達を収容した際に彼が船員に聞かせている言葉が破れかぶれではなく、海の男として船乗りとして守らなければならない矜持なのだと伝わってくる。また、その後のシーンがギリギリのバランスでありつつも潜水艦に同乗した彼らが最低限の平穏を守った理由付けにもなっている
それでも裏切り者は出てしまうもので。その落とし前の付け方には驚いてしまったな。軍人であれば軍規違反でどう罰されてもおかしくない。なら、敵兵に施す優しさなんて本来は無い筈で
それでも命を奪う事は良しとせずどちらの人間にとっても平等な罰で仕舞いにしたサルヴァトーレの判断は現代人とて見習わなければならない教訓が籠められているように思えたよ
そしてサルヴァトーレの温情が彼だけが持つものではなく、海の男や船乗りであれば持ち得るものであると描かれていたのも良かったな
迫りくるイギリス艦に対して、恐怖からそれまでの温情を消し去ろうとした船員に対して、ひたすらに同じ船乗りの温情を当然のように信じて海を進んでみせたサルヴァトーレやそれを許したイギリス艦の館長の決断には驚かされた
誰もが出来る判断ではない。しかし、誰かが決断できる判断であるべきとも感じられたよ
命を奪い合う時代であるのは確か点。一度でも攻撃を始めてしまえば誰かが死ぬ
けれど、人を殺すのは機械的な行為に留めるべきで。機械が壊れて人が人と向き合った時にどのような決断をしなければならないか、それを教えてくれるとても良い作品だと思えたな