タカツテムの徒然雑記

主にアニメや漫画・ライトノベルの感想を投稿するブログとなっています。

~贄姫と獣の王 スピンオフ~ 白兎と獣の王子 5 感想

本格的に始まるラヴィとエドワズの対立。そうなると自然に発生するのは荒事
これまではラヴィやスバルが荒事に対処してくれたけど、中途半端にリチャードが戦える状態だとむしろ連れて行くのは危険となるわけか…。だからってあの流れで置き去りにされて納得するくらいならリチャードは旅になんて出なかったのだろうけど

リチャードを託す為にビーシアに頭を下げたラヴィの様には胸を突かれる。それだけ今のラヴィには余裕がないし、リチャードを巻き込みたくなくて必死になっていたのかな…

だからこそ、リチャードがラヴィを見捨てずに「ししょーの弟子だ…!」と自分を定義して戦いの場へ向かうのは良かったよ
そのようなリチャードにビーシアが王者の片鱗を見たのは納得というもの


物語が終盤に近づいた事でリンクしてくるのはレオンハートが進める人間の国との和睦交渉。そもそも物語は交渉の試練からリチャードが逃げ出した事から始まった
また、本作の敵となったエドワズの狙いも人間と魔族の関係破綻
だから物語の終幕は自然とその交渉の場へと集約されるわけで。つまりはリチャードがその場で何を成すかが試される

逃避行のような旅の中で彼は自分の正体を隠してきた。それはラヴィから嫌われない為でも有ったけど、いつの間にかそれはラヴィやスバルと対等でいる為の条件になって
なら、彼が正体を表す理由はやはり二人と対等で居る為で。スバルを守る為に傷ついたラヴィ、ラヴィやリチャードを守る為に自決を選ぼうとしたスバル
追い詰められた二人を守る為にリチャードが出来る事はそれこそ己とは何者かを明かす行為だったわけだ

ここで更なるリチャードの成長として描かれるは、二人に加えてエドワズならぬテディをも守ろうとしている点か
テディは悪ではなく優しい人間だと信じている。また、彼とてリチャードにとっては守りたい”みんな”に含まれる
その意志は簡単に認められるものではない。だからこそ最後の試練が父への反抗となる

レオンハートは統治の為には対立する者の犠牲をやむなしとした面もある王。対して平和な時代に生まれたリチャードは「全部守れる王様」を目指すのか…
それはレオンハートの言うようにどう考えても甘い理想。けれど、その証左とする魔物を聖獣へと変化させた彼の本質はきっと誰もが到達できるものではない。そこには未知の希望がある
そんなリチャードの在り方がラヴィやテディの思い違いを直してやり、また人間の国との和睦を成立させる流れは良いね


逃避行が終わってリチャードが己の正体を明かしたなら訪れるのはラヴィとの別れか…
ラヴィを慕うリチャードとしては簡単に認められない別れという最大の問題に対して、最高のタイミングで登場して収めてみせたサリフィには本編主人公の貫禄を感じてしまったよ
また、一瞬だけサリフィとスバルの視線が交錯するシーンは印象的

そして時は流れてリチャードは15歳ですか。……10歳の姿に慣れているせいかゴツくなった彼のインパクトは凄い(笑)
成長して少しずつ国の運営に関わり始めるお年頃。そのように成長した彼が改めての形でラヴィ達と再会するラストは良かったな

本編とはまた違った視点から人間と魔族が存在する夜の問題に向き合った本作。対立を越えて愛を紡いだサリフィとレオンハートの子であるリチャードを通して新たな物語を紡いだという点を評価し、また感謝したくなる作品でしたよ