タカツテムの徒然雑記

主にアニメや漫画・ライトノベルの感想を投稿するブログとなっています。

ようこそ実力至上主義の教室へ 2年生編12 感想

今巻はかなり凄い展開になったな……
坂柳と龍園の勝負結果こそ事前に予想していた通りだったけど、そこに至る過程が完全に想定外だったし、ノーマーク気味だった堀北クラスと一之瀬クラスの勝負も予想外にも程が有る結果となったよ…


前々からヤバいヤバいと前フリされていた学年末特別試験、しかしいざ蓋を開いてみればまさか人狼ゲーム系とは思わなかった
これは綾小路が推理していたように何かしらの横槍が入った…?

兎も角、今回の試験における特徴は事前対策が不可能だった点だね。これまでも事前の備えをしても意味は薄い試験は有ったけど、当日まで何が行われるのか教員すら知らないというのは異質
だからそれまでの期間で出来る事なんて基本的にない。クラスメイトとの対話を進めた坂柳の行動が良い準備と映る程度
そのような認識だからこそ、事前に大将の地位を要求し更に勝敗に拠って変動する報酬を要求した綾小路の判断が際立って見える

そもそも自分が矢面に立つを良しとせず、暗躍を繰り返してきた綾小路を大勝負の大一番で使えるなら頼りになる。けれど頼ってしまったら今後は頼れない
危うい賭けだけど、ここで迷うこと無く選択できた堀北は良い成長をしていると感じられたよ

そのような認識だったから、いざ始まった特別試験で堀北が一之瀬に全く歯も立たなかった点は驚かされた
確かにアレは一之瀬の得意分野というか、人を深く観察し人と広く交流しなければ真実が見えてこないゲーム。似たような点では坂柳が一切のミスをしなかったのはクラスメイトとの対話が活きた部分があったのだろうし
その意味ではその道を歩み始めたばかりな堀北では分が悪かったという話

逆に言えば、ここで敗北を知った堀北は成長の余地が生まれたと言える
それを意識したからこそ、綾小路は堀北を労ったのだろうし


今巻のメインイベントの一つとなる綾小路と一之瀬の戦いはかなり特殊な推移となったね
前提として、一之瀬は堀北に圧勝してしまう程にこの試験の強者であり綾小路に惚れた事で様変わりした人物
なら、綾小路は彼女とどう向き合うかを決めなければならない
もし、彼女から勝ちを拾うなら彼女を上回る観察力を持つか背信者ルールによって彼女を乱すしかない

そう思っていただけに、綾小路の策略が言ってしまえば1年以上前から始まっていたなんて想像もしていなかったよ
実際には倒す為に仲良くなったのではなく、仲を深めた結果として彼女を倒す武器を手にしたというべきか
今の一之瀬はクラスとして敵対していても綾小路を心の底から信頼している。そこにこそ、彼女の心をぶち壊すチャンスが有る

だからって、ああまで仕掛けるなんてなぁ…
あの場面で前園を始末したのはそれこそ一之瀬の精神的な安定を崩す一手。約束を破り、更には一之瀬にとってタブーと言える退学者を出す事で彼女の信頼を揺らがせている
その上で自分達の関係が根底から思っていたものと違うと告げられればそりゃもうなぁ…

以前の一之瀬は退学者を出しかねない状況や自分の罪により立ち直れない状況だった。それが綾小路への恋心で持ち直したのだから、それが崩れてしまえば待っているのは闇ばかり
彼女の心は完全に折られてしまったのだろうね……


もう一つのメインイベントが坂柳と龍園の勝負
前巻にてどちからに破滅が訪れる賭けを交わした二人の戦いこそ今巻はこのイベントに費やされると思っていただけに、予想外の展開を見せた綾小路の後だと少し地味な印象…と暫くの間は思っていましたよ
と云うか、坂柳と龍園こそ今回の試験を真っ当な実力で戦わせていたんじゃなかろうか

だからこそ、次第に見えてくるのは坂柳と龍園の実力差
龍園とて参加者をよく見て優等生等を当てているが、坂柳の方はまずミスすらしていないね
それは判断力だけでなく観察力すらずば抜けている証
おそらく今回は運が悪かった等という話ではなく、今の龍園では坂柳に届く事は決してない

だとしても、あの龍園が何の見栄も見せずに敗北を認めるとは思わなかったな
それはある種、気持ちの良いシーン。龍園の負けでは有っても彼の成長を見れたのだから

そのように感じたからこそ、ここに綾小路の罠が仕込まれていた点をおぞましく感じてしまう
あの伝言は龍園が敗北を認め、坂柳にお膳立てする心境に成らなければ意味のない代物。いわば敗者が勝者に道を用意する状況に綾小路は仕掛けを打っていたわけだから

綾小路にとって橋本が生き残るも関係ない
表向きの伝言だけに坂柳が気付いて彼女がAクラスを成長させても良かったのだろうけど、成長の余地がより大きい龍園こそ綾小路が望んだという事実は重く響くね…


終わってみれば、今回の試験は綾小路の一人勝ちに
それもクラスリーダー全てを倒したと言っても良い状況なのだから恐ろしい
堀北は綾小路との賭けに負け、クラスの戦力から彼を失う
一之瀬は恋する相手から裏切られ、頼る相手もなく闇に落ちるだけ
坂柳は綾小路から望まれていない事実を突き付けられ学校を去る
そして龍園は敗北を認めたのに、その認める心を利用する形で助け出された

今回の試験はこれまで以上に綾小路の異質さを浮き彫りにするものになったね
けれど、そんな彼がAクラスを目指すレースに関わる事はない。その状況とて異質

恐らく次の12.5巻は波乱の後始末が為されるのだろうけど、これってひょっとしなくても綾小路の人間関係が潰滅する事態も有り得るんじゃなかろうか……