ああ、結局ハニエル探しについては正体不明の形で終わるんだ。でも、これは二人の活動を余計に大きな形としない為には必要な措置と思えば、二人の「好き」の結晶であるハニエルは正体不明のままで在る方が良いのかもね
新菜と海夢は好きを伝え合って交際が始まった
…のだけれど、周囲には今更感を以て迎えられるというのはそれだけ皆からしてみれば海夢の好意は明らかだったのか。まあ、そりゃそうか
てか、それよりもお好み焼き屋で集まっていたあのメンバーが進級しても一緒だし高校卒業した頃でも普通に繋がり有るっぽい描写にほっこりしてしまう
この作品、コスプレしている時の雰囲気も好きだけれど、あの男子連中が集まっている描写も好きなんだよなぁ
一方で気になるのが付き合い出した新菜と海夢の日常はどう変わるのか、という点だったけど、良い意味で変わらないというか新菜が堅物すぎる(笑)
海夢のスキスキアピールがより強まるのは理解できる。そんな彼女に対してより距離感保つじゃん
彼女の「手 繋いで♡」に対して「嫌です」って返せる彼氏って何さ(笑)
ここから名前で呼びあったり、あまつさえ結婚に辿り着くまで二人の間にはどれだけの紆余曲折があったのだろうと想像してしまうけど、不仲になるような瞬間はきっと無かったのだろうとも想像できるね
113話では海夢達が目指したコスの在り方が体現されているね
商業的にコスプレをしてステージを広げるのではなく、あくまでも好きを表現する場として趣味のコスプレを同好の士で行う。「自由でいい」というのは本作が初期から表現し続け、そして無事に辿り着いたテーマと言えるね
その自由さは最も新菜に必要なものであり、最も体現していたのが海夢と言えて
またもや突然の海とか自由度が凄すぎるけど、これこそが海夢だよねってなるなぁ
初期において、新菜にとって海夢は遠い世界の人だった。だから彼女に好きを見つけて肯定されたのはまるで明るい世界へ引き上げられたかのような心地だったろう
なのに、海夢はあんな事を言ってくれるんだねぇ……。彼女にとって世界が分かたれているなんて無い。彼女にとって五条新菜は同じ世界に居たからあっさり声を掛ける事が出来て、更にはこうして今も付き合っている
あちらとこちらは違うなんて分けていた世界は最初から無かったのだ
そして最終話である115話は二人の好きがこれでもかと詰まった未来が描かれたね
和要素とコス要素が混ざりあった衣装部屋、結実した二人の好きの形
けれど、そうして作り上げられたコス衣装や雛人形をメインに映すのではなく、何て事のない、けれど笑顔に溢れた食事風景を主題に持ってくるのは本作が何を描こうとしていたかを感じられるかのようで良かったなぁ
その作り方は番外編においてもエピローグにおいても通底しているね
新菜と海夢の日常はコスを通して得られた多幸感によって他の様々な笑顔に伝播していると判る
そうした作り方が何に基づいているのかと少し不思議だったのだけど、作者後書きを見てかなり納得できたな
確かに本作って読んでいてストレスだったり不快感を覚える描写ってほぼ無い。それは優しさに満ちた世界
なら、どうしてそんな世界を作っているかと言えば、それこそ好きを楽しいものであると表現する事こそ本作の目的だったんだねぇ
だとしたら、ここまで本作を楽しんで読み続けた自分は作者の願い通りに好きを楽しめたのだと改めて感じられたよ
ここで本作の物語は終りを迎えるけれど、本作で示されたようにコスプレを楽しむ人は現実に存在するのだとも知れた作品、何度も言うけれど本当に楽しませて貰った良作ですよ!
おまけとして、司波刻央と溝上将護の馴れ初めが
この二人ってハニエル編から登場したばかりで本筋にも絡んでいないのだけど、妙に関係性や人間性が好きな二人だっただけにこうして掘り下げて貰えたのは有り難かったり
こうしてみると、ああまで性格が気難しいしプライドの高い二人が並んで海夢のコスプレを褒め称えた事は本当に偉業なのだと感じられるね
