タカツテムの徒然雑記

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『ウィキッド 永遠の約束』 感想

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正直、前編はそこまで好みで無かったというか、マジョリティとマイノリティの対立構造が起こり行く構図表現には感銘を受けたけど、前編だけだとグリンダの立ち位置が中途半端でありどのような役割が与えられているかがあまり見えて来ず、そこまで高評価はしていなかったりした
けど、この後編に至り評価が一変したよ
善と悪、御伽噺(機構)と真実、愛と友情…。それらの要素が美しく組み上げられた後編はとても自分好みのお話と感じられ、とても楽しめましたよ…


幻想のような背景美術が多用されビビットカラーで彩られた前編はまさしく御伽噺だった。しかし、前編終盤にてエルファバとグリンダは御伽噺の裏側にある真実を知った。オズの国は善意だけで組み立てられてはおらず、悪意を善という言葉で取り繕った支配と排斥が存在した
エルファバは悪と罵られようと真実を皆の前に提示する為に行動した。それは結果的にヴィランそのものであり、親友グリンダをも悲しませた。エルファバ一人であればそのまま悪として堕ちていくだけだった

ただ、機構に取り込まれたグリンダが善の側に残ったからこそ、エルファバに救いの手を差し伸べられたと言える
グリンダは事態に対して自発的に考えるという事をあまりせず、善側の広告塔となっているように見えた。ぶっちゃけオズの魔法使いと共にエルファバの懐柔をするシーンなんてヒヤヒヤさせられたし
でも、そんなグリンダが居なければエルファバはオズの魔法使いの提案を信じるなんて出来なかったし、都合の良い取引の裏側にあった真実に気付くこともなかった。エルファバは善に残ったグリンダが居たからこそ、悪のままに動物達を救い出せた
……結果、グリンダの恋心も結婚式もズタズタに引き裂かれてしまうのだけど

エルファバはオズの魔法使いの言葉に騙されなかった事で御伽噺の向こう側にある真実に気づいた。対してグリンダは夢のように思えた結婚式が壊れた事でようやく御伽噺では済まされない世の中の構図に気付いた
あのシーン直後のグリンダは哀しい姿だったけど、同時に彼女が御伽噺ではない彼女なりの真実へ向けて動き出す生命力を感じられたよ
但し、エルファバが暴れまわるだけでは動物達の賛同を取り付けられなかったように、真実を求め始めたばかりのグリンダも同様に望ましくない状況を引き寄せてしまう

ネッサローズは様々な意味で本作において犠牲となってしまった人物だったね…
彼女もボックの示す御伽噺のような恋心から覚めて真実を知り始めた筈だった。けれど、真実として抱いた感情が悪意に満ちていたばかりに彼女は好きな人の心を失い、好きな人を傷つけ、果ては己の破滅へと突き進んでしまった
無闇矢鱈に真実を目指しても手に入る善も愛も無い。他者に真実を求めるのみならず、己にも真実を求めなければ最悪の結果だけしか手に入らない

それはフィエロに関して最も現れた要素となったかな
最初は素晴らしい見た目のグリンダに惹かれた。次にエルファバの心に惹かれた。エルファバが戦いを始めた際には機構への違和感や不満を抱えつつも機構の一部に属する事を受諾した。けれど満足できる筈もなく。かつて愛したグリンダを傷付け敵対すると判っても彼はエルファバと共に行動する道を歩んだ訳だ
フィエロは真実の為に痛みを受け入れ、その上で真実を実現する為に行動し続けた。だからこそ、ラストのハッピーエンドに辿り着けたのだろうし


作中では何度もエルファバとグリンダの友情が試されるようなシーンが続く。でも見方を変えれば、あの状況において試される程の友情を保ち続けていたとも言えるんだよね
悪に堕ちる事を許容したエルファバ、喪失の痛みを乗り越えたグリンダ。それでも友情を保った2人だから善悪を超えて希望を残せる、御伽噺を超えられる
悪の魔女では成し得なかった希望への革命が善の魔女を通して行われる。それはエルファバの意志をグリンダが引き継いだと言うより、悪に堕ちたエルファバがそれでも最期に善行を志し、善に居続けたグリンダが少しだけ悪行を披露したような

二人の善と悪が御伽噺の裏側にて行われたのは印象的。『オズの魔法使い』の主人公はドロシーであり、彼女の冒険こそ物語の本題。なら本作が『ウィキッド』であろうと御伽噺を壊す事は許されない
その意味ではエルファバもグリンダも道は違えどオズを守ったという点では一致するんだよね。エルファバがドロシーに負けると決断したから、グリンダがドロシーを導く役を辞めなかったから。そうして『オズの魔法使い』は守られた

だから最大の善行を成した2人に御伽噺の裏側でとびっきりのハッピーエンドが提示されるのは当たり前かもしれず
あのシーンには感動してしまいましたよ…


前編を鑑賞した際には美しい背景美術に驚かされたものだけど、後編は全く異なる色調に。またお話のテーマも希望と絶望が戦うものに一変
個人的には後編の作り方が好みなのだけど、こうして見終わってみると辛い事があっても希望に満ちていた御伽噺のような前編があったからこそ、後編は光り輝く物語になっていたと思えるね
だってあの希望ある学生生活の中でエルファバとグリンダが親友にならなけりゃこの後編は成立し得ないのだから

『オズの魔法使い』なんて見たのはかなり昔で記憶にも殆ど残っていないだけに、本作で受け止めたエルファバとグリンダの物語を胸に留めた状態で改めて鑑賞したく成るような素晴らしい映画でしたよ…